La Rochelle の夕暮れ。海の向こうは大西洋です
昨晩、2回目のブランデンブルク協奏曲3番と5番のコンサートがパリから電車で3時間ほどの大西洋に面したLa Rochelle(ラ・ロッシェル)という町で無事に終わりました。
リハサールの始まり
本当に肩の荷がどっさりと“音”を立てて下りた感じです。
今回の本番は色々なハプニングがあって、精神的にかなり疲れましたがとても良い経験になりました。
日本ではまずなかなかソロを弾く機会の少ない名曲を演奏させて貰えて、本当に感謝です。
オーケストラのメンバーにも助けられ、アルルの本番で学んだことをこの4日間ほど復習、ゆっくり練習して、本番の自分の弱い部分を自分なりにカバーして臨みました。

ホールに到着してチェンバロを見ると、なんと今世界で一番高い!注文しても10年待ちのパリの製作者のチェンバロでした。こんなに良い楽器で弾けるなんて!と思って弾くとやはり鍵盤も軽いし特種な音がします。何とも言えないハープのような、この製作者独自の“音”です。
オランダの巨匠レオンハルトも去年このアントニオ・サイディ氏、(イギリス人)の楽器でリサイタルをパリでしていましたが、それは素敵なコンサートでした。
そして、調律をしてくれる方がいらしたのですがとても親切な方で、聞けば私と同じ先生に師事したということ。
ほとんど私は自分で仕上げているのですが、重要なコンサートの前にはレオンハルトと同じく80歳のフランスの巨匠のユゲット・ドレイフュスさんに演奏を聴いて貰ってます。特に何を行って貰おうと期待して行くわけではないのですが、もう人間を超えているような・・・人間国宝のようなオーラがかもし出ていて、ご自宅にある本物の350年前のチェンバロを弾かせて頂くだけで、聞いて頂くだけで、もう本望です…という感じなのですが。
本番後に調律してくれたピエールさんと。同門なんて偶然!
そして、聞けばこの楽器はなんとその“ユゲット”というニックネームがついていて彼女も勿論演奏したという歴史のある楽器でした。アルルで弾いたチェンバロよりもやはり鍵盤の戻りが0.02秒くらいかもしれませんが早く、軽くそのお陰で難しく早いパッセージも力を抜いて弾くとさらさらっと決まる訳です。今回ほど良い製作者の楽器の違いを感じたことはありませんね。表現をする為に最高の条件が整っているとやはり演奏者はかなり助けられて安心して表現することができます。

毎回ある意味実験的な部分があるのですが、今回はかなり腹をくくって、もう最後はやるだけ!
という感じでした。
満員のお客さんの中、オーケストラを弾き始めた瞬間になぜかこんなにきれいなメロデイーをバッハはあれこれと考えてやっと生み出したのではないか・・・
初演をした時は大変な反響だったのではないか・・・

という思いが過ぎり、だからこそ誰でも知っている名曲中の名曲だけれど、1音1音丁寧に演奏をさせて貰いました。
それは、バッハの音楽を1人でも多くの人に伝えれるのなら。という演奏家としての思いでしょうか。
今回は、”私が弾く!”というエゴ的な意識よりも、作曲家と聴衆の間の1つのパイプとして、自分の技術や感性、全てひっくるめてバッハの音楽を伝えたいと思いました。
いつもそんなことを考えているわけではないのですが、今回はなぜか一番後ろの席にバッハが聞いているのではないか?なんて気もしてくるようなバッハに対する尊敬の念から親近感を感じました。
この一番後ろで知っている人が聞いているのでは?というのは、別に特別なことでなく、チェンバロを始めた10年前にピアノに比べて音量の少ないチェンバロの音が一番奥まで届くようにするにはどうしたらよいか・・・と色々考えた時に、楽器の限界というのはある程度あるけれど、あとは演奏者のイメージによって実際に人の耳に届いていないとしても想像力で音を一番後列まで飛ばせるのではないか?と思ったからです。
これは何回か実験したり、本番をするうちにどうやらイメージすると違うらしい。ちゃんと届いたらしい・・・と手ごたえがあったので大きなホールで演奏する時はどこかで一番後列に知っている人が居るのでは?と仮定してその人に向けて演奏することで、ホール全体に音が伝わるとイメージするわけです。
左はコンサートマスターでヴァイオリンのソリスト、Francois-Marie、右はドラヴェルソの明るいイタリア人のソリストJonatha
世の中上手な人は一杯いるので、パーフェクトにきれいに弾くのは他の人に任せれば良いわけで、もとから完璧にしようとしてもどこかちぐはく、どこかいびつにしかならないようなタイプなので、上手に弾くことよりもバッハの音楽から感じること、見えることをそのまま伝えたいと思いました。
カデンツァは何百回と練習しているので、もう似たようなパターンというか歌い回しができていたのですが、不思議と今回の本番は良い緊張感や本番の持つ特殊な聴衆と舞台の上の空間のせいか、自分でも新鮮な間の取り方や早いパッセージの流れなどがあり、自分自身の中にある可能性が無意識に顔を出した時に普段とは違う規定外のものが出てくるんだなあ。と今日録音を聞いて思いました。
リハーサルの後ホテルに戻る途中に古い通りにこんな気組みの建物がありました
これも今回の発見です。
今回は、本当に色々な面で大変でしたが、発見も多く大きな経験と自信につながったように思います。
本当にこうして演奏できたこと、そして暖かく見守って演奏してくれたオーケストラのメンバー、指揮者のみんなに感謝です。
そして、コンサートにいらして下さり、”あの黒い髪のアジア人の子は一体誰なの?!”と思いながらも演奏後にブラボーを言いに来て下さった方がたに心から感謝です。

来週は12月の日本でのコンサートの2回目のリハーサルの為にブリュッセルに行き、12月始めは再びこのオーケストラと子供の為のコンサートをサル・プレイエルでします。
きっとあっという間に帰国になると思いますが、色々な貴重な経験をできたことは本当に宝ですね。
それにしても、今回のリハーサル前日までソロを演奏するのが知らされていなかったというのには参りましたが、今後もし3日後にコンサート弾いて。と言われてもチェンバリストにとって“お箱”のブランデンブルクがレパートリーになったので良かったと思います。
帰り道にあった教会
1718年に建てられたL’eglise St-Sauverという説明
フランスではどんな小さな町でも教会はありますね
素敵なオルガンがありました
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