この数年、
どうしてチェンバロに・・・・・?
Why the harpsichord?
Pourquoi le clavecin?
と不思議そうに私の目を覗き込んで、人から聞かれることが多々あった。
その度に自分でも一瞬、あれこれと考えるのだが、簡潔に言うと*出会い*だと思う。
人生の中には、自分に大きな影響を与える、出来事や人と出会うことがある。
私にとって、偶然、それがチェンバロだったようだ。最近は、その偶然が必然だった気もする。
今は、チェンバロを選んで良かったと思うが、やはり、20年弾き続けたピアノに対する愛着は大きく、本当にチェンバロに変わると決めるのには、アメリカで半年感、自答自問する日々が続いた。
そして、アメリカのピアノ卒業試験でラヴェルの難曲、スカルヴォを演奏した後、しばらくピアノは弾かないで、チェンバロ1つに絞って、深く掘り下げようと決心した。
しかし、今思うと、その決断をするまでに、既に色々な影響を与えてくれた*出会い*があった。
その1つに、17世紀に実在した偉大なヴィオール奏者、マラン・マレの生涯を描いた、*めぐり逢う朝*という映画があった。美しい映像と共に流れる音楽が、なんとも新鮮だった。
映画が終わっても、よく分からない、込み上げる感激に涙がとまらなく、しばらく帰れなかった。あそこまで、心の中に響いたことは、映画というレヴェルを超えて、私の感性に何かが訴えてきた。
後に、そのサウンドトラックが、スペインのヴィオール奏者、ジョルディ・サヴァルのグループが弾いていたというのを知り、ボストンで会ったバロックチェリストは、*ああ。僕その録音で弾いてたよ*と聞き、びっくりしたことがあった。
2週間前に、パリでまさにそのジョルディがピエール・アンタイ(チェンバロ)とロルフ(テオルボ)と共に、マレの曲を弾いた時は、会場中の人が固唾を飲み、静まり返り、全ての人が一音一音を堪能していた。アンコールは後半と同じくらいの長さにもなり、口うるさいパリジャンも、満足気であった。
また、もう1つの大事なきっかけとなったのは、大学時代に取っていた、トラヴェルソ奏者の有田正弘先生のバロック音楽の授業である。
先生は、毎週ジーパンやラフな感じで現れ、その日の気分で、ざっくばらんにバロック音楽に関することを話してくださるのだが、それまで、誰もきちんと教えてくれなかった、大事な舞曲のスタイル、装飾音や調律などを、17・18世紀の文献を読み漁った知識と演奏経験と共に説明してくるのである。
ただ何となく聞いているのだが、*ぴぴ!*っとくるものがあり、凄い大事なことを言ってるらしい・・・・しかし、初めて聞くことばかりで、目から鱗状態である。
そんな飲み込みの遅い私は、何となく毎年毎年、同じ内容でも1から聞きたいと思い、気がついたら、4年連続で取っていた。
その間に、少しずつ、幼少の頃から慣れ親しんでいた、モーツァルトは、こういうイメージ。バッハはこう。なんて、教わっていたものが、どうやら違うらしい・・・・・
と気がつき、楽譜の読み方、調性にもきちんと、それぞれのキャラクターと意味があって、過去の作曲家は意図的にそれを使い分けていたらしい。
とか、レトリック(修辞法)の話なんかを聞いてしまった日には、いわゆる、今まで、学校で受けてきた音楽教育の内容とあまりに異なり、脳みそがひっくり返ってしまうのである。
それは、私だけでなく、多くのフォルテピアニストやチェンバリストに今なっている友達も、同じ様な経験をして、困惑し、今までの常識を壊し、楽譜を今まで以上にさらに深く、できるだけ作曲家の見地から読もうとする努力が始まるのである。
しかし、大学在学中は、フォルテピアノを副科で取り、モダンピアノで弾いていたベートーベンやモーツァルトをウィーン式の膝ペダルのフォルテピアノで弾いてみたりしていたが、結局、ピアノでアメリカに留学した。
そして、アメリカに行って初めてのピアノのレッスンで、先生に、*ああ。君、そういう古い音楽が好きなら、ピーターに会うべきだよ。*と言われチェンバロの先生を紹介された。
それが決定的な出会いになるとは、その時、全く予期していなかった。
*Concert of Jordi Saval(Basse de viole Barak norman,Londres,1697),Pierre Hantai( Harpisichord) and Rolf Lislevand (Theorbo et Guitare) at cite de la musique
*頻繁にアメリカ、ヨーロッパ、日本で活躍しているジョルディ・サヴァル。この夜は、ヴィオールの名曲をたっぷりと聞かせてくれた。
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