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claveciniste et pianofortiste

ふらっと気軽に…/simplement…aller quand vous voulez

今週は、コンサート準備と練習、体調管理に集中しております。
思えば11年前に初台の東京オペラシテイでチェンバロリサイタルをしてから、機会のあるごとにリサイタルを東京で開催させて頂いて参りました。
無事にコンサートが終わるまで、数か月前より準備が始まり、終わった後もお礼状をすぐに書いて出すまで、本当の【終わり】ではないのを実感します。
1人1人の方が都合をつけて、わざわざ足をお運び頂き、来て頂くということを考えますと、本当にありがたいと思います。そして、またいい加減な演奏をしては失礼になるという身の引き締まる思いでもあります。

フランスのコンサートは、ほとんどが既にオーケストラやアンサンブル、各音楽祭のオーガナイザーの方達などによって運営され、【お仕事】として、リハーサル後にコンサート当日にその場所へ行き、演奏し、帰ってくるという【演奏のみ】に集中できる環境です。
しかし、日本のコンサートはそれとは反対に、本当にやりたい企画はほとんどが【自主企画】で共演者を呼んだり、ホール、ちらし、プログラム、チケット販売、広告に至るまで自分たちでオーガナイズするのが普通です。
パリ在住の日本人の旧友とも話しましたが、日本はまだまだ【お手紙に始まり、お手紙に終わる】という伝統的な方法で皆様にコンサートにお集まり頂く事が多く、フランス人やアメリカ人には、【コンサートには来たい人が来るのに、なんでまたお礼の手紙を書くの?】と不思議がられることもあります。

しかし、【郷には郷に従え】という通り、各土地にそぐったやり方があります。
この10年間、私自身は日本に居なかったとはいえ、こうしたコンサートの機会を通して、数年ぶり、あるいわ数十年ぶりに小学校の先生や同級生と嬉しい再会をしたり、昔お世話になったピアノやソルフェージュの先生にもお会いでき、コンタクトを続けられている良いきっかけとなっております。
バロック音楽というと、どこか難しそうな、敷居の高そうな、よく分からない・・・つまらなそう…】と思う事があるかと思いますが、そんな先入観なしに、ふらっと【今日は映画でも見に行こうか。あ、コンサートにでも行こうか。】
なんていう気軽な気持ちで聞きに来て頂ければ嬉しいです。

パリでは、映画や展覧会、ダンス、バレエ、コンサート、オペラがひっきりなしにあり、毎週のイベントをまとめたparis Scopeなど買うと、1週間に行きたいコンサートだけでも沢山あり、切り捨てなければいけないほどです。
そして、犬が歩けば棒に当たるほど、あちこちで素敵な展覧会がやっています。先週は、レオナルド・ダ・ヴィンチ展がルーブル美術館、マティス展がポンッピドゥーセンターで、ドビュッシーと同時代の印象派画家展がオランジュリー美術館で、同時に行われているというなんと贅沢な!
それに加えて、レ・ザール・フロリソン、ジョルデイ・サヴァル、クリストフ・ルセ、18世紀オーケストラのコンサートが同時にありました。
あれこれと迷ってしまいます。

そんな環境に居ると、ヘンデルのオペラへ行ったり、楽器博物館へ足を運んだり、ふとゴッホが見たいと思いオルセー美術館ロダン美術館のゆったりとした庭園で咲き始めた花に囲まれてカフェをしたり・・・という時間は、とても身近にあるのです。
パリの魅力はそんな身近な距離に文化が、、そしてどこでも気軽にちょっとカフェをして、隣の犬を連れたおじいさんと世間話をしたり、そんな小さな、けれども素敵なコミュニケーションが街に溢れていることでしょうか。

今回、来日するラファエルとパスカルは1000人のホールでも、20人のプライベートなサロンでも気軽に、楽しく、本番5分前までも全く普段と変わらぬ【等身大で音楽をしている】気さくなフランス人です。
だからこそ、日本でコンサートをするという事は通常半年前から用意するのは当たり前なのですが、ラファエルの【コンサートをやろう!】の一言で3カ月という今までで最短の、普通では考えられない準備期間+3週間は私がパリに行っていて居ないという厳しい条件下でも開催することに決めました。
なぜなら、そんな等身大のまま【気軽にバロック音楽をできるだけ多くの方に楽しんで頂きたい】からです。
まるでパリに居る様な、【ちょっとバッハを聞いてくるね。】と出かける様な、今日は自分の為にちょっと素敵にオシャレをして出かけようかな。そんなウキウキした気分を少しでも味わって頂けたら、とても嬉しいです。

私自身、コンサートへ出かける時は、やはり現実を抜け出して、音楽が始まったらその中に没頭したいと思います。現実の世界からちょっと抜け出て、絵本のお話に入ってしまった様な。もしくは、中世の教会にタイムスリップしてしまったような・・・
パリで聞いたフランソワ・クープランのルソン・ドゥ・テネーブルは、それはそれは美しく、聞いているうちに頭の雑念が消え、【音のシャワー】を浴びている様でした。
コンサートが終わるころには、会場のみんなが一体となり、その数百年前の世界へ飛んでいました。
そんな風になれれば理想ですが、音楽は、1人1人が好きな様に、それぞれの感性に任せて受け止めれることも魅力ではないでしょうか。
音楽は形としては残らずに香りの様に消えてしまうけれど、記憶の中にその時の雰囲気、印象、自分がどう感じたか・・・などふと心の中で蘇るものではないでしょうか。

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