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claveciniste et pianofortiste

シューベルトのトリオ/Le trio de Shubert

今日は、日帰りでまたもやブリュッセルに行ってシューベルトのピアノトリオのリハーサルをしてきました。
今週の木曜日に本番なのですが、なかなかの大曲!

何と4楽章通すだけで50分もかかるんです。繰り返しなしで!
1827年にシューベルトがプライベートコンサート(友人の結婚の為に書いたらしいです)で初演した模様をシューベルトの友人が後日、日記に書いているのですが 
*とても長い・・・・のでカットの必然性も出てくるかも・・・と書いてあります。*
シューベルトは、テーマを演奏者がどのように演奏するか、テンポや全体のバランスにもよってカットは必要、必要でない場合もある・・・と書いています。
ちょうどこの年、出版社に何か曲を出版しませんか?というオファーに対してシューベルトがこの曲を送ったのですが、このトリオだけ断られた!
ということから2番目に送った出版社から初版が出版されて、当時では大量の1100部が刷られて大変好評だったということです。
今でも、モダンの楽譜ではヘンレ版はすでに省略済みのヴァージョンで、ベーレンライターだとここから*省略*とマークと記載されているので演奏者が自分の判断で選べます。
それにしてもこんなに長い室内楽曲は・・・他に多分チャイコフスキーの偉大なる芸術家の為の・・・くらいでしょうか。シューベルトのピアノクインテット*ます*も結構長いですね。
でも、音楽的に深いというか掴みにくい!
そして転調がまるで予期しない所に飛んでいく!ので油断禁物。ピアノパートはむちゃくちゃ!難しいです。(私にとって)
チェンバリストにとってこの曲を弾くのは・・・そうですねえ。ハードルをやってた人が棒高跳びに挑戦するような・・・そんな気分でしょうか。(苦笑)でも、やるならやっちゃえ!とまあ一生に1回かもしれませんが、シューベルト時代のピアノで演奏させて頂きます。

ピアニストの内田光子は、*死ぬ前に聞くならシューベルトがいい・・・*とおっしゃってましたね。あんなに素晴らしいモーツァルト弾きの方でも最後に聞きたいのは心から愛してるシューベルトなのだそうです。
フォルテピアノで演奏する際には、楽器がもうすでに決まっている場合(限定される場合)、その時代に合った曲を選んで演奏します。
または、その逆。こういうレパートリーを演奏したいからこのフォルテピアノが必要・・・となります。
どっちも贅沢な話ですが、チェンバロが1750年くらいまで栄えて、フォルテピアノ(強弱が表現できるようになり)モーツァルトやハイドン、すでにバッハの子供たちの世代もこの*新しい*発明されたばかりの鍵盤楽器の為にチェンバロ曲とは全く作風の違うソナタなどを作曲し始めました。
モーツァルト時代~現代のピアノまで、まるで馬車~スポーツカーに変化するくらいの段階を経ています。
その為、モーツァルト、ベートーベン初期までは同じピアノでもベートーベン中期からは鍵盤が足りない!為、もうちょっと後記のピアノが必要です。
イギリス製ブロードウッド1794年。後に6オクターブ半を開発した際に数か月かけてロンドンからウイーンに居るベートーベンにプレゼントをして触発され新しい作風のソナタを作曲した。
そして、シューベルト、メンデルスゾーンのウイーン系の楽器と同じ時代にイギリス、フランスでもそれぞれのピアノが発明され、ショパンやデュセック、クレメンティなどピアノに触発されながら自分の音楽のスタイルを築いていきました。
これらのピアノで実際にそれぞれピッタリの作曲家の曲を弾くと、やはり楽器からとても多くのことを教えてもらいます。アメリカにも60台くらい古いピアノを集めて修復し、自宅に博物館まで作ってしまった御夫婦はコンサートなども企画していますが、もうそれはそれは考えられない贅沢!!
リストはこれ、ブラームスはあっち、ショパンはあのピアノ・・・と1人1人弾き分けれるほど楽器がありました。
私は感覚人間なので本を読んでも頭に入らないのですが、*百聞は一見にしかず*とはまさにこのことで、
弾くと*音*を通して自分の感覚が色々なものを感じて、タッチやイマジネーションも普段とは全く違うインスピレーションを貰ったりします。
これは、オリジナルの350年前のチェンバロを弾いてもそうですが、もうその歴史というか、数世紀隔てて今も*音*という振動を鳴らす木の楽器ですから、ゾゾ~~~~~っと鳥肌の立つような低音だったり、本当に音は小さくても心に響くような、今まで聞いたことのないような、自分の*知っている*音のイメージを根本から覆すような・・・・音に出会ったりします。
それはやっぱり現在の楽器製作者の方が一生懸命、、昔の楽器を研究して作るのですが新しい音がします。木も乾燥していないと鳴らないのでヨーロッパの製作者は17,18世紀の古い建物が壊されたりすると、すごい勢いで*木*を探しに行くみたいです。そうして集めた貴重な(17世紀の木)を使ってチェンバロの音の要である響板に使用したりします。やはり、それは1年前に倒した木を業務用ドライヤーみたいなのを使用して無理やり乾燥して完成するチェンバロとの音は違うわけです。
木はずっと呼吸をしていますから、季節でも収縮が変化します。

数年前にお伺いしたノルマンデイーのシャトーに住んでいらっしゃるコレクター兼チェンバリストの方のお宅には、有名な世界に3台しか現存しないチェンバロの1台をお持ちですが、その他にも本当に貴重な楽器があります。
17、18世紀にヨーロッパで流行した*シンノワズリ*(中国風の模様)はベルサイユ宮殿でも東方への憧れや、そんなに遠くの国のものを持っているという一種の富の象徴でした。
このコレクターの方のお持ちの小さなスピネット(長方形の小さな鍵盤楽器)が置かれている部屋は、なんと壁紙もシンノワズリ!! 御部屋のインテリアも楽器に合わせているなんて!と驚嘆したのを覚えています。
来週は、ブリュッセルの楽器博物館のショパンの愛したプレイエルという素晴らしい名器(1843年)でショパンのソナタやフランクのヴァイオリンソナタのリサイタルがあるので、また5日ほどブリュッセルに行ってこもって練習です。
でも、こういった素晴らしい楽器に触れられるのは本当に素晴らしいインスピレーションの源なので、どこでも何のその~~~っとオタクな人たちは(私はまだまだです。笑)飛んでいきます。
予定よりかなり長くなってしまいましたが・・・

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