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claveciniste et pianofortiste

チェンバロの装飾/La decoration de clavecin


8月のパリは雨続きだったそうで、この数日は晴れていますが、すっかり秋の風です。夜は寒いくらいなので、既にコートやジャケットを着ています。
さて、春にはドイツから届いていた私のチェンバロの響板の装飾が終わりました。
装飾をお願いしたのは、フランスのチェンバロメーカーで100台以上描いていたスペシャリストのシャルルさん。
イタリア風の装飾のサンプル。
右はしの金色の部分は金箔ではなく、銀箔の上に金色の塗料を塗り金箔風に仕上げたもの。
イタリアの建築の天井などには、この様に金箔に見せたいけれどお金が足りない時にこのテクニックを使っていたそうです。

彼は、チェンバロ装飾以外にもアンティーク家具やシャトーのお部屋などの修復・画家としても多くの著名人宅で仕事をしています。なんとデザイナーのエルメス(Hermes)のオーナーである3兄弟のご自宅(オルセー美術館のすぐ近く)で家具の修復をしたり、同じく有名デザイナーのカール・ラガーフェルドの自宅でも1年近く金箔をアンテイーク家具に張る仕事をしていた・・・そうです。
でも、シャルルさんはどちらかというと山小屋に住んでいるタイプ。一体?
聞くと友人が紹介してくれたということで、パリはやはり人とのつながりが大事なようですね。
エルメスさんの持つモロッコにある超高級ヴィラの部屋に絵を描いてと頼まれたそうですが、パリの家から長期間離れるのが嫌!?ということで、断ったそうです。(笑)
こちらは、本物の金箔を使用した独自のデザインの鏡や額縁のサンプル。上の塗った金色との差が分かりますね
シャルルさんは、メールもしないし携帯も留守電のみ。根っからの芸術家気質で、どんな所に居ても建物などの装飾を見てインスピレーションを貰い、即興でモチーフを描いたりします。17・18世紀の絵画の模写や修復する技術は全て独学だそうです。
中央は大理石を真似て描いた部分。
ヨーロッパの多くの建物にこの技術が使われ、遠めでは大理石に見えるが実際は描かれているものが多くあります。

数回に渡ってチェンバロの本体の色とのバランスや、フレミッシュ(オランダ・ベルギー地方)スタイルの装飾やモチーフを話し合い、アイディアをまとめて描いてもらいました。

響板(弦の張ってある部分)にいよいよモチーフを鉛筆でデッサンし始めます。
ローズ(ばら)と言われる楽器の製作者のイニシャルなどが残される部分の装飾
17世紀フレミッシュチェンバロの典型的なブルーでモチーフを描き始めます。
見ていたら楽しそうだたので、私も描かせてもらいました。薄く、デリケートに少しずつ描くのがこつだそうです。
こうなりました!このモチーフの間にその後描く花や鳥のモチーフなどの配置を決めていきます(セロハンテープのメモがその内容)
この模様を全体にバランス良く描いていきます。仕事中のシャルルさん
花を描いた後。
チェンバロの先端部分のチューリップ
完成しました!
と言っても、実はブルーのモチーフを描いていた時は私も見ていたものの、実際に花などが描かれ始めた1週間は留守中でした。
帰宅して見た第1印象は・・・・・ちょっと、色がきつすぎないかい?!
これは・・・・蛾?!?蝶?やっぱり、私の大嫌いなガにしか見えない!!
しかも、鍵盤の目の前でこのガを毎日見て弾くのは・・・・・
フレミッシュチェンバロの響板の装飾は、ブルーがお庭の柵という概念でその中に植物、野菜、昆虫や鳥などを描き、ガーデンを表現しているそうですが、お願いだからハエやいも虫は描かないでと念を押しましたが・・・ガが・・・・
ということで、この仕事を終えてとっとと3週間もポルトガルにバカンスに行ってしまったシャルルさんに説明して訂正してもらう予定です。
もう少し柔らかい色にして貰おうと思いますが、この後弦を張り、蓋から反射して受ける光やほこりで色あせていくので問題はないそうです。
しかし、この後にチェンバロの蓋の内側に風景画を描いてもらう別の画家の方がチェンバロを明日取りに来るので、訂正はその風景画終了後の10月末予定・・・・
という具合にどんどんと完成する日は遅れ・・・・既に待つこと2年半。
ドイツのチェンバロ製作者にクリスマスにはできるかな?!?と聞いたところ、
それは大丈夫!サンタ クロースが持ってきてくれるでしょう・・・・・と。
本当でしょうか。日本のきっちりした期限までに仕事をしてくれるシステムからすると、もう比較になりませんね。その為、帰国する度に日本の行き届いたサービスに感激してしまいます。まるで浦島 花子のように。 

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