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claveciniste et pianofortiste

Duphly(デユフリ)の初版譜

皆様、こんばんは。

6/11リサイタルまで1週間となりました。私の楽器をホールへ持っていきます。

こちらは、演奏させて頂く18世紀フランスの素敵なクラブサン曲を残したDuphly(デユフリ)の初版譜です。

現在でも、この様なファクシミリの版を買ったり、ネット(IMSLP)で気軽にダウンロードをして見ることができます。

17,18世紀フランスではルイ王朝の許可がなければ出版できなかった為、巻頭には必ず献辞が昔のフランス語で書かれています。見ているだけでも美しいですね。

チェンバリスト(伊語cembalisto)(フランス語ではclavecinistクラブシニスト)は当時の作曲家の自筆譜や作曲家が生きていた頃に出版された初版譜など残っている楽譜を調べて、できるだけ信憑性の高いものを使います。

まるで、18世紀からの手紙を読んでいるようですね。

現代譜と比べると、微妙なスラーやスタッカート、アクセントなどの記号がずれていたり、音が違う場合もあります。その為、色々な楽譜を確認することが重要です。そして、その後どの情報を選ぶのかは奏者の判断によります。

コンサートで演奏予定のデユフリ「3美神」は、始めにフランス語で指示が書かれています。「楽譜の中の点は、左右をずらして弾いて下さい」という注釈です。これが書いていないと、うっかりスタッカート(切って弾く指示)だと誰もが思ってしまいます。

フランス人は、(今でもそうですが)細かいセンスにうるさいので、親切に装飾表も作曲家1人1人きちんと書いてくれています。

17世紀フランスの作曲家ダングルベールの初版譜。見ているだけでも流れるようなフランス語のようですね。

その為、同じトリルの記号でも作曲家によって、どの様に弾くのが指示が異なることが多く、必ず装飾表を確認して演奏します。

私は、当時の作曲家が込めた想いを楽譜に託し、それを再現する作業をチェンバロで行っていると考えています。音だけでなく空間や間も含めて。

例えば、18世紀フランスに作られた香水の調合表があるとします。

詳細は紙の上に書いてありますが、実際にその香りを2021年の今に蘇らせる為には、イメージやその内容を読み解く知識やセンス、経験が必要だと思います。

そして、1人1人再現する人によって、書いてある同じ内容でも異なる香りが生まれるのではないでしょうか。それが面白いですね。

音楽やお料理も、同様に十人十色になりますね。

当時、作曲家や貴族が楽しんでいた”音”にできるだけ近ずきたいと願っています。勿論タイムマシーンがない限り、その「音」を知る術はないのですが。

しかし、世界中の当時のチェンバロ(伊語:cembalo)(仏語:clavecin クラブサン)が今でも残っています。

アメリカでチェンバロを始めてから、それらのコレクションを旅行で行く度に連絡をして弾かせて頂きました。敷板の高い博物館も、休館日など誰もいない時に見せてくれたりします。

まるで、宝物に会いにいくような気分です。

そして、毎回見事に裏切られるのです!

良い意味で。

生まれて聞いたことのない音、それはまるで数百年生きている長老とお話しているような気分になります。

ヴェルサイユ宮殿所蔵の名器ルッカ―ス

やはり、フランス様式のクラブサンはその楽器が製作された当時の曲を弾くとしっくり来ますし、イタリア様式のチェンバロはまるでイタリア語のように滑舌がはっきりとしていて、タッチも全然違います。

作曲家にはもう会うことは叶わないけれど、彼らが聞いていたであろう音に触れることで、少しでも楽譜の音の世界に近くなる気がしました。

今は旅行をすることが難しい時期が続いていますが、それらの聞いた音は今でも頭の中に浮かび、その時代を想えば繋がれるのではないかと思います。

早くまた安心して色々な国へ自由へ行ける日、そして音楽を世界中で楽しめる日が来ることを心より願っています。

そして、6/11の公演で素敵なクラブサン曲を皆様とご一緒に楽しめる空間となりますよう、心より願っております。

感染予防対策をして、お待ちしております。

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